「陰険ブス」と貶されて婚約破棄されたあたし。おバカな王太子なんかこっちから願い下げです!! 真実の愛? 騙されてるとも知らないでほんとダメなんだから。
「このわたし、ライゼリード・フォン・ヴァインシュタインの名に置いて、アーリシェ・ラ・ローエングリーン公爵令嬢との間に結ばれた婚約を破棄することをここに宣言する!!」
それは、よりにもよってこのヴァインシュタイン王国建国記念祝賀パーティーの真っ最中、来訪してくださった諸外国のご来賓の目の前で。
その主役となるはずであった王太子の口から高らかに語られたのだった。
っていうか、なんで今? こんな場所で国家の恥を晒してどうするのこのぼんくら頭が!
「アーリシェお嬢様、これ、片付けてもいいですか?」
耳元でそんなふうに囁く側仕え件護衛のリリム。
ああ、国王陛下まで顔を真っ赤にされて怒っていらっしゃる。
もうしょうがないわね、速やかに御退場願いましょうか。
それなのにぼんくら王子はなおも続ける。
「ふん。突然のことで言葉も無いようだな! どうした、理由も聞かないのか!?」
「はは、知りたいだろう、聞かせてやるよ。わたしは真実の愛を見つけたのだ!」
そういうと、ライゼリードは手招きをする。「パーシャ、おいで」
てとてとと走り寄ってきて彼の腕にしがみつく頭の悪そうな貴族令嬢。
着ているドレスは既製品それも去年の流行りのもの。
子爵? それとも男爵? ひょっとしたら騎士爵のどなたかの御令嬢かしら?
お会いしたことありませんよね。
見覚えの無い娘《こ》です。
でもそうですか、この娘がそうなのですね。
「お前はこのパーシャ・マルガリッタをいじめていたそうだな」
はあ?
「ドレスをよごしたり、切り裂いたり。あげくに階段から突き落とそうとしたそうじゃないか。わたしはおまえのような陰険ブスと結婚するなんてまっぴらなんだ。ほら、どうだ、この場で宣言してやれば、父上とて婚約破棄をみとめざるを得ないだろうさ。そうしてわたしはこのパーシャと結婚する。彼女を王太子妃にしてやると誓ったのだ!」
ああ。
もういいわ。
もうほんと、こんなおバカな王太子、こちらから願い下げです!
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