白日の石刻 -Claris Epitaph-
人が死ぬと、稀に本ほどの大きさの《石版》が残る世界。
そこには、故人が最後まで伝えられなかった想いが眠っている。
本来、石版を一冊の《石本》へと変えられるのは、国家資格を持つ書記官だけ。
しかし、その資格を持たずに、死者の記憶を呼び起こす少女がいた。
クラリス・エピタフーー通称クラル。
彼女が持つのは、神から授かったと伝えられる加護、《白日の石刻ーリトグラフ・ヴェリタスー》
クラルの涙が石版へ落ちた時、眠っていた記憶は《石本》となり、その場にいる人々の前へと鮮やかに映し出される。
風の匂い。
触れた手の温もり。
懐かしい声。
生前に伝えられなかった言葉。
もう会えない人が、何を想い、何を遺そうとしたのか。
その記憶は、残された人の心を救うこともあれば、知りたくなかった真実を突きつけることもある。
クラルは、ある出来事から灰読士のノア、石版修復士のシグと共に、さまざまな街を巡る旅に出る…
行く先々で出会う人々と、彼らが託す石版。
そこに眠るのは、家族への愛情や、言えなかった謝罪、誰にも明かせなかった秘密だった。
けれど、死者の想いを届ける旅は、やがてクラルたち自身の運命にも深く関わり始める。
一冊の石本が示す、過去への手掛かり。
百年前の流行病と魔女狩り。
そして、彼女たちを追う者たちの影。
かつてこの世から消された記録。
歴史から抹消された人々の存在。
誰かの手によって封じられ、語ることさえ許されなかった過去。
なぜ、クラルだけが《白日の石刻》を授かったのか。
祖母ステラが知る過去には、何があったのか。
そして、クラルという少女は、本当は何者なのか。
別々に見えた出来事がつながっていく時、クラルは自分自身に隠された謎と、世界から消された過去へと近づいていく。
これは、死者が最後に遺した想いを受け取り、家族や仲間と共に旅をする少女の物語。
その旅の先で待っているのは、ひとりの少女の正体と、世界の歴史から消された真実だった。
154,904字 (3295.8字/話) 38%