現実世界[恋愛]
『婚約者が新居を親に捧げたので、私も家を売った結果』
新しい鍵を渡された夜、
あなたは笑って言った。
「これからは家族だ」
その言葉は優しかったけれど、
どこか、
私の境界線を静かに越えてきた。
あなたは新居を売った。
悪気もなく、
誇らしげに。
「親のためなんだ」
「家族だから」
その瞬間、私は知った。
あなたの言う家族には、
“私の意思”が存在していないことを。
帰り道、
エレベーターの鏡に映る自分は、
驚くほど静かな顔をしていた。
怒りではなかった。
ただ、
未来が消えていた。
私は家を売った。
祖母の匂いが残る部屋。
夜景。
柔らかな灯り。
ひとりで安心できた場所。
全部、手放した。
悲しかった。
少しだけ泣いた。
でも、
空っぽになった部屋で深呼吸した瞬間、
胸の奥が軽くなった。
あなたは鍵の前で立ち尽くした。
開かない扉。
知らない住人。
帰れない夜。
そして初めて知ったのだろう。
家とは、
誰かの善意で奪っていいものじゃない。
愛とは、
勝手に共有していいものじゃない。
窓を開ける。
新しい部屋に朝の風が入る。
静かだ。
でもその静けさは、
孤独ではなく自由だった。
未設定
全11話完結
2026/05/27 04:49更新
22,089字 (2008.1字/話) 32%
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最終取得日時:2026/09/05 12:12
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