歴史[文芸]
戻り船、神田の灯
神田にある、安くて旨いと評判の居酒屋「だるま屋」。看板娘のおみつには、腕のいい料理人で将来の婿養子と目される幼馴染の善三郎という許嫁がいた。しかし、ある夜、善三郎は大店の娘・おゆみを連れて店に現れ、家柄と富に目が眩んでおみつとの縁談を一方的に破棄してしまう。
だが、善三郎が手に入れたはずの幸せは、巧妙に仕組まれた罠だった。おゆみの実家である廻船問屋・篠野屋は、重罪である「抜け荷(密輸)」の露見を恐れ、何も知らない善三郎を身代わりの主として据え、罪を擦り付けて逃亡したのである。
捕縛された善三郎に下った裁きは、一生消えない罪人の証である「二本の入墨」と、過酷な「遠島(島送り)」であった。
それから十年の歳月が流れ、恩赦によって江戸へ戻った善三郎。病に蝕まれ、かつての面影を失った彼は、導かれるようにかつての「だるま屋」の暖簾をくぐる。そこには、新しい家族と幸せな時を刻むおみつの姿があった。
変わり果てた善三郎に、おみつは気づかないふりをして一皿の鯵を出す。それは、過ちを犯した幼馴染への、彼女なりの精一杯の慈しみであった。
ネトコン14 / ESN大賞10 / 春チャレンジ2026 / シリアス / 和風 / 近世 / 江戸 / 神田 / 文芸部門
短編
2026/03/29 04:20更新
3,483字 34%
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最終取得日時:2026/06/23 12:10
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