ローファンタジー[ファンタジー]

面倒なので黙っていたら天才参謀と誤解されました

後年、マルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。
諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。

だが、その大半は誤解である。

確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院主席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。
とはいえ本人に言わせれば、ただ試験の点が良かっただけで、戦場を切る直観も決断力も野心もない。
あるのは、人の話を最後まで聞く忍耐と、怒鳴られたくないという切実な願いだけだった。

会議で意見を求められれば、なるべく穏当なことを言う。
揉めそうな議題は、欄を分けて別の紙にする。
怒られそうな言葉は、怒られない言葉に替える。

それだけのことを繰り返していたはずなのに、味方からは「全体を見通す男」と持ち上げられ、敵国からは「法と兵站を操る若き参謀」と警戒され、歴史には「連邦を統べた沈黙の天才」と書かれていく。

これは、面倒を避けたいだけの青年が、誤解と制度と善意によって、だんだん歴史の中心へ押し上げられていく物語である。

※ハーメルン、カクヨムでも投稿しています。

R15 / 残酷な描写あり / HJ大賞7 / BWK大賞1 / BK小説大賞2 / シリアス / 男主人公 / 西洋 / 近世 / ミリタリー / ESN大賞10 / 戦記 / 参謀 / 勘違い / 歴史
全59話連載中 2026/07/12 03:19更新
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最終取得日時:2026/07/17 12:11
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