異世界[恋愛]

夫が浮気しましたので、庭ごと出てまいります

夫が愛人に贈った白い薔薇は、わたくしが七年かけて接いだ株から切られたものでした。

「君の趣味の花が、ようやく役に立った」——十五年。十三でこの庭の見習いに入り、
砂を混ぜ、堆肥を積み、水の抜け道を作り直して、この丘を「薔薇の伯爵」の庭にしました。
それを、趣味と。

「かしこまりました。ですが、持参財目録の第四項をご確認ください」
株も、種も、園丁道具も、わたくしのものです。土は運べませんので、株だけ、いただいてまいります。

切り花は三日で枯れます。買った成株は、土が合わずに枯れます。
そして翌春、伯爵家の園遊会には、薔薇が一輪も咲きません。
花期は、年に一度しか来ないのです。

王都の外れで「枯れた庭を診る」庭師になったわたくしのもとへ、
北の辺境伯が訪ねてきました。霜の土地に、どうしても咲かせたい一株があるそうです。
——五年、かかります。
——待ちます。

わたくしは、怒りません。ただ、持ってまいります。

▼ 静かに手を引いた側が、季節に味方されていく話です。恋愛はゆっくりです。
 言い返さずに引き上げた側が、あとから正しかったと分かっていくのがお好きな方へ。

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全25話完結 2026/08/16 19:00更新
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最終取得日時:2026/08/19 12:06
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